古くて新しい命

糸満 海人工房・資料館の方からの連絡が入る。

昨年末から今年にかけての数ヶ月間、残り少ない現役の舟大工である大城清さんの手助けも得ながら、ホコリと木屑によって文字通りに真っ黒になりながら修復をして来たサバニが完成し、来る連休には進水式を行う予定であると言う。

更にはこのサバニを通じて、少しでも多くの人にサバニの事を伝えるために、舟の名前をインターネットを使って募集したいという相談だった。

同資料館のウェブサイトの運用をお手伝いさせて頂いている私としては、身に余る光栄な連絡、夕方〜夜の時間を使って早速作業に取りかかった。

4月29日に予定されている進水式までもう間がないため、おっつけ仕事にはなってしまったが、簡単なフォームと案内ページの作成が終わったので、この場も借りて告知をさせて頂きたい。
なお、命名者には上原謙さん作成の本物のウェークやそのサバニへの乗船権が貰えるとの事、是非多くの方に応募をして頂きたいと思う。

サバニ愛好家の皆様にも応募はもちろん、この事を広く伝えて頂きたい。

今年も宜しくお願い致します。

新年のご挨拶に代えて

(今年は都合により、新年のご挨拶を控えさせて頂いております)

これまで取り組んで来た事業の問題や、中でも某企業の社会的にも許されるはずのない、とある対応が原因で、止む無く訴訟に持ち込まざるを得なかった事などが背景にあったため、昨年の大部分を半ば憂鬱な気持ちで過ごす事となった。

その件に関連して迷惑をかけている多くの人達への手前もあり、ずっと控えていた弓の道場へ実に8ヶ月ぶりに向かったのは、昨年末に弓友からの新年射会への誘いの電話があったからだった。

それ程長いブランクを空けて弓を引いた事などこれまで一度もなかったため、果たして矢が安土に届くのか、そもそも射が成り立つのかが不安で仕方がなかったが、競技間合いの大前で、新年の祝射を一手させて頂く事になった。


ブランクの間に増えた新しい会員や、先輩諸氏が不安げに見守ってくれる中、無事に肌脱ぎを終え、本座から射位に進む時の久しぶりの緊張感は、何とも言えず心地良い物だった。

いきなり強い弓は控えなさいと、お借りした普段より5Kg程も弱い弓を引く妻手(右手)が、引分けで震える程ではあったものの、結果一手皆中と言う、自分でも想像していなかった好結果と、それを喜んでくれた周囲の人達の笑顔が何とも嬉しい射となった。

今年はこの射に象徴される様な素晴らしい年になる様な、そんな気がする良く晴れた休日の事だった。

トップ写真:久しぶりの弓。後に上腕三頭筋の痛みが直ぐにやって来た…。

iPadどうする?

プロのブロガーでもない私に、文章入力ツールとしての用途の為だけのデバイスを購入させてくれる程に、このご時世の我が家の財政はそうは甘くない。
そういった を論破すると言う観点ではなく、あくまでも冷静に私なりの利用シーンを考えてみた。

  1. iPad版が秋に発売されるOmin Project(プロジェクトマネージメントツール)を使い、会議で進捗管理情報を少人数で共有する
  2. 酒の席で仰々しくノートPCを起動する事なく、写真などをその場で皆に見せる
  3. まとめたアイデアをKeynoteで見せてディスカッションをする
  4. 請求書・見積書作成のデータを通勤時や待ち時間等にNumbersで入れておく
  5. 自宅や職場で、屋外での煙草の際にウェブやTwitterをチェックする
  6. もちろん、GMailを確認し必要に応じて返信する
  7. RSSをチェックして、ウェブを見る
  8. 特に通勤電車内で仕事に関して思いついたアイデアや、ブログ用の記事を記述する

と実に多種多様な、ひょっとすると写真の加工や図面の描画、或いはHTMLのコーディングといったMac/Windowsを立ち上げないと出来ない一部のハードワークを除いた、日中の仕事の大部分を占める様々な事がiPadだけで完結するように思えて来たのである。また、これらの何れもノートPC(私の場合は未だにPowerBook)を使って出来ない事ではないが、その手間や仰々しさから解放される事は大きなメリットであるように思う。
マルチタスクに対応していない事に関して言えば、却って一つの事に集中出来るからむしろ良いのではないかと自己完結型の言い訳をしていたが、次期OSのアップデートによってその問題さえも近い将来に解決されるとなっては、もはや自らの中にくすぶっている購入の意志を否定する事さえも難しいのであった。

金本の右肩


沈をした(ディンギー)ヨットに這い上がる事が出来ない程の、肩の痛みに1年以上にわたって苦しんでいた経験がある。これはこれで非常に危険な事である事は言うまでもないが、実はその頃には寝返りをうつという、たったそれだけの行為にさえも激痛が伴うため、その痛みで眠れない夜を過ごした事もあった。
「もしかしてもうこのまま回復する事はないのかもしれない、ヨットにも乗れなければ子供とキャッチボールをする事も叶わないのか.....。」と考えた時の、あのやるせなさと絶望感はこの先も恐らく忘れる事は無いだろう。

常にファイン/スーパープレーを当たり前のように求められ、テレビやラジオまで含めると何十万人もの視線を浴びるプロのアスリート、ましてや阪神タイガースという人気球団の中心選手ともなれば、その一挙手一投足への注目度は計り知れない。
広島から阪神への移籍後、自らが手本となって自チーム内の気の緩んだプレーを戒めて来た金本選手は、レフトから内野へのスローイングもままならない自分のプレーの不甲斐なさに忸怩たる想いだった事だろう。左手首を骨折していてもなお、出場するからにはチームに迷惑をかける訳には行かない、それどころか普段と変わらない最高のプレーをしなければならないと、右腕だけで打ったタイムリーヒットが思い出される。
金本の連続試合フルイニングス出場の世界記録が確定した(途絶えた)日から遡ること数週間、はからずとも思い出していたのは数年前の自分の肩の痛みの事。ゲームに出場したプロのアスリートとしての責任感、自分の肉体に関する憂慮、そして阪神の4番バッターとしての重圧は、ウィークエンドセーラーの私等とは比べようもないものだと頭では理解しつつも、自然と金本選手の痛みを共有している様な錯覚に陥りながら事の成り行きを見守っていたのである。
形ある物が必ず壊れるのと同じ様に、いつかは途絶える運命にあった彼の世界記録。「金本を見習いなさい」と、折に触れて私から叱咤されてきた野球少年である愚息共々、恐らくずっと私たち親子の記憶に残り続ける選手であろうことは言うまでもない。
沢山の関係者が寄せたコメントのなか、選手個人の記録を大切にする岡田前監督が残した、「1週間前に電話で話した時に「絶対休むな」と言って(金本も)「分かりました」と言っていたのにな…。事情がどういうことか分からんからな」(サンスポ)という一文に何とも救われた様な気分となった。

Twitterでのライブ中継


沖縄県国頭郡宜野座村役場の職員、教育委員会の先生、地元の海洋レジャー業従事者、著名な海洋アスリート、私のサバニチームのメンバーといった異なる職種や立場の人間が集まり、海からの地域活性化をテーマにした飲み会が企画された。

どうせならと、Twitterで中継してフォロワーからも広く意見を集められないものかと自らが発案し、宴会場にMacを持参して行く事になった。貴重な意見やアイデアを記録する事にもつながるため文字通り一石二鳥である。

さて、事前に個人的に告知をして参加をお願いしていた名古屋在住のサバニチームのメンバーの他にも、1,500人以上のフォロワーを持つアカウントを含めた何人かのリツイートを得た事に加えて、飲みながらのディスカッションの記録にもなったため一応の成功と言えなくもないが、何よりも酒で徐々に酔っぱらって行く頭に対抗して参加者の発言を拾って短い文章に要約し、さらに並べられたつまみや泡盛のコップを気にしながら正確にキーボードを打つ事は、想像以上に大変な作業だった。
何と言っても、最大の問題点は、満を持して横浜から駆けつけたつもりの私が、殆ど発言する時間も無く殆ど議論に参加出来なかった事...。
次回はもう少し方法を考えて臨みたい。

こちらから発言の一覧を見る事が出来ますので、ご興味がある方は是非どうぞ。

トップ写真:箸が止まらないほど美味しかったニガナーの和え物。在宜野座村、居酒屋・定食屋の桜屋さんにて。

電子書籍の可能性


以前も書いた様に、海洋冒険小説が私にとっての読書の黄金ジャンルである。或いはスパイものやハードボイルドものでも同じなのだが、そこに登場する人物には、階級、性、名やニックネーム、更にはコードネーム等の実に多くの呼び名が存在する。海外を飛び回っているビジネスマンの様に、外人の友人や仕事上での知り合いが日本人並に多いような人は別にして、私の様な一般人は読み進むうちに一体誰が誰か解らなくなるのが関の山である。

この多くの原因は日本の名前の場合は登場人物の名前と実際の知人を重ね合わせて記憶したり、顔や姿形を想像する事によって登場人物を把握しているのだろうが、カタカナの名前ではなかなかそうもいかない事が原因なのだろう。
私の様に記憶力が些か足りない読者の為に、カバーの折込み部分に主要登場人物の名前や肩書き、あるいは簡単な主人公との関係と言った作品における役割が記載されている場合があり、何度も繰り返し参照する事によって辛うじて物語についていく事が出来る訳だが、これとて登場事物の作品中の重要性を予め教えられる一種のネタばれになる事も否めず、またそこに入り切らない脇役の存在を希薄化させる事にもなりかねない。
いっそ、日本語の名前に全置換すれば良いのではないかと思った事もあるが、作品の雰囲気を著しく損なう事になってしまう事は明白だ。

先日のPAGE2010で説明を受けた企業の多くが実感としてそう教えてくれた様に、iPadの発表によって電子ブックにおけるePub形式の知名度が日本で一気に上がった感がある。
そもそもePubはテキストを主体とした電子書籍向けに策定された企画であるため、レイアウトに重きを置くコミックや雑誌には向かず、また策定からそれなりの時間が経過しているため、批判や問題点の指摘も数多く見られる様ではあるが、AmazonのKindleやSONY等の現在米国で主流な電子書籍リーダーが採用している事も後押しになって、いずれ何らかの形で日本でも普及する規格である事は間違いない。
そしてその事によって、例えば地方紙等の日本の地域メディアの事業が健全に発展する事をサポートする一つのインフラへと成長するのであれば、それは素晴しい事である事には間違いない。

がいずれにせよ、ePubや他の電子書籍の規格はあくまでも流通や利用の枠組みの話であって、如何に今の印刷物と同等かそれ以上の利便性(最近の言葉で言えばユーザ体験)を様々な電子デバイス上で実装していくかという問題とは一線を画して議論されるべきであり、小説における日本人にとっての外国人の名前問題(?)を始めとして、電子書籍であるが故の利便性を追求しない限り、その普及はないのではないかと思う。

ちなみに外国人の名前については、電子書籍上では全ての名前に登場人物一覧をポップアップで表示させるリンクを付けたり、或いは少々乱暴かもしれないが同一人物の表記を一元化して表示するモードを設けたり、或いはアバターを表示するのも面白く解りやすいのではないかと思う。映画化された作品であれば、俳優の顔写真を表示し、そこにDVD販売用ウェブサイトへのリンクを付けても良いのではないだろうか。

トップ写真:高校時代からの愛読書、チャンドラーの長いお別れ。知能の低さを疑われそうだが、何度読んでも登場人物の名前が憶えられない。

恵みの大地

春には土筆が顔を出すいつもの公園近くの傾斜の急な空き地で、食べるには少々育ち過ぎてしまったフキノトウを見つけたのは昨年の事。

排気ガスをまき散らしながら始終車が行き交う国道16号線からも数100mしか離れておらず、また住宅地の真ん中にあるそんな土地で、フキノトウが育っている事に驚きを違和感を憶えたものだが、そろそろ今年も土から顔を出しているのではないかと思い、子供とのキャッチボールのついでに暫し探索をしてみた。

人差し指ほどの長さの小さなフキノトウが、1つ、2つ。一緒について来た次女とともに10個ほどの春一番の大地の恵みを摘んで持ち帰った。
綺麗に水洗いをして天婦羅にしてみたフキノトウは、この上なく美味。自然と、こんな街中であっても万遍なく恵みをもたらしてくれる大地への感謝の念が湧いてきた。

瀬戸内の海

京都に住んでいた子供の頃には、家族ぐるみで行き来していた親戚の家に住む仲の良い従兄弟に会うために神戸に頻繁に訪れた。また、高校の終わりには親しくしてくれていた大阪の先輩とともに、坂本龍馬に憧れて高知を旅した事もある。

そんな限定された経験によって創られたからか、瀬戸内海と言えば私にとっては茶色に汚れた神戸港の海であり、四国の海は黒潮が押し寄せる太平洋岸のイメージしか持ってなかった。

今回の四国への出張のために選んだルートは、経費の節約という面もあったものの、神戸で知人とミーティングをしたかった事もあったため、羽田ー神戸間をSKYMARK、神戸ー岡山を新幹線、岡山からは特急としてみた。
そんな初めての経路は、当初は思ってもみなかった素晴しい体験を私にもたらしてくれた。そう、明石海峡大橋から望む瀬戸内海の景色である。

地元に住んでいる人達にとっては極ありふれた日常の風景である事には間違いがないだろうが、大小様々な船が行き交うこれ程までに美しい海は、前日の徹夜で寝不足の私を興奮させ、まるで子供の様に窓外の景色に釘付けになってしまった。そして、遥か太古の村上水軍を想起させ、沖縄のサバニ同様に地域オリジナルの勇壮な和船を復元してこの海に浮かべる事が出来ればどんなに素晴しい事だろうかと、一人妄想をしてしまった。

トップ写真:車中から撮影した瀬戸内海。