大丈夫か家具屋?小売業に迫られるパラダイムシフト


日本の一般的な住宅事情では、子供の数だけ学習机を購入して狭い家に押し込めるというのも厳しいものがあるが、我が家も例外ではなく、この春に入学する三人目の子供の学習机のレイアウトに頭を抱えている。そんな事はおかまい無しに、2月にもなると新入学の準備シーズンに突入、近所のスーパーにも一年に一度、学習机が広いスペースに所狭しと並べられる。これは今の時期の風物詩の様な物であり、季節の移り変わりや春の訪れを感じさせてくれる事ではあるが、実は、日に日に手垢にまみれて汚れていく展示用の家具を見ていつも疑問に思うことがある。


実際に気に入った学習机をこの場で見つけた家庭のうち、果たして何割の消費者がこのスーパーで買うのだろうか、という事である。


賢い主婦ならば、材質やクオリティが気に入った学習机のメーカ名や型番をその場で控えておき、インターネットのショッピングサイトの中で最も低い価格を提示している店から購入するだろうからである。自身には売上が上がらないばかりか、展示スペースを割き且つ商品を手垢にまみれさせてしまっている小売店は、たまったものではないだろう。これは、街の家具屋や家電製品店にも同様の事が言える筈で、中でも商品の大きさ故に広大な店舗面積を必要とする家具専門店のビジネスモデルは事実上崩壊してしまっているのではないだろうか。


従来、小売業者は良い品を市場から品定めして消費者の膝元まで輸送し、自らが品定めした商品であるがゆえにその商品の特徴を熟知した上で消費者のニーズに対して最適な解を提供する役割を担っていた。これは学習机に限らず、靴でも、食料品でも、電化製品でも同じことが言えたはずである。同時に消費者からの意見のフィードバックによって、自らの商品選定能力を高めると同時に、メーカに対してユーザニースを伝達もしていたはずである。また、地域密着型の小規模店舗にとって、消費者とのつながりは不可欠であり、且つ自らも別の商品に関しては消費者でもあったために、正直で真っ当な商いが自ずと成立していた。


この様な、ある意味では牧歌的でさえある商行為が、インターネットの普及によって今日では根底から覆されてしまっているのではないだろうか。こと家具の流通に於いては、家具専門店はもはや従来の小売業的なアプローチではなく、例えばメーカが共同出資した展示場としての役割を担わせる等の別の手段を模索する事によって、生き残りの道を探すしかない様な気がする。