立て続けの別離


事務所の大幅なレイアウト変更に伴って、本棚に溜まりに溜まった書籍や雑誌を思い切って整理する事にしました。その中で最も場所をとっていたのが、ヨット業界の老舗雑誌であり、またYachting(ヨッティング)誌の廃刊後も唯一セーリングに関する情報を提供し続けてくれて来たKAZI(舵)誌。何と一番古いものは1995年の発行でしたので、10年以上も前から私の傍に居てくれた大変大切にしていた雑誌だったのです。もしかしてこの先、再度ページをめくる事はあまり無いかもしれませんが、特に長距離航海に関する特集を中心に最低限のものをスクラップしてバインダーに保存する事とし、残りを積み重ねた結果高さは2m近くになりました。
いつか子供達が大きくなり家を巣立っていったなら二人で長距離航海、出来れば世界一周をしようと家内を説得して始めたヨットと舵誌の購読ではありますが、青年時代(?)の当時と比べると、どちらかと言えば外洋クルージングよりも沿海でのディンギーレースや沖縄でのサバニ帆漕レースに熱中する中年になってしまっています。ただ、昔のページを捲る度に、表紙のショートハンドが似合いそうなヨットの名前を知りたくて家内に頼んで舵社に問い合わせた事や、やはり何と言っても新婚時代に語り合った二人(?)の夢が甦って来るのでした。
何故、事務所に趣味の雑誌が一杯だったかと言う疑問はさておき、以前と比べて格段にこざっぱりとした当社に是非お出掛け下さいませ。


表紙のショートハンドクルーザは、あこがれの船でした。

もう一つの別れはiWebiWebの運用方法にも触れた先のエントリーから一週間も経っていませんが、普段から読ませて頂いている幾つかのブログに紹介されていた週刊ダイヤモンド2008年2月9日号「グーグル化知的生産革命」を読み、記事とは直接は関係はありませんが折角続けているブログが少しでも検索エンジンに引っ掛かる様にとの.MaciWebに依存した環境下での今までの地道な努力*1が馬鹿らしくなり、連休を使えば時間も取れるかとあっさりと「はてなダイアリ」への引越を決めたのでした。本ブログへの投稿はこれが恐らく最後になると思います。

注)本サイトが移設後のブログです。何卒よろしく引き続きのご愛読をお願いする次第です。

ちなみに、ダイヤモンド誌の記事中では最近のベストセラーが生まれるメカニズムとして、場合によっては出版社から送られて来ると言う膨大な量の新刊本に関するアルファブロガーの書評やメーリングリストが、それらの数万人にも及ぶ読者を介してネット経由で広がり、その結果として人気サイトのランキングやソーシャルブックマークでの露出機会が更に高まると言う好循環によって、質の良い書物であれば極めて短期間にネット通販や実際の書店で売れ始めると言う仕組み*2が解説されており、今回の私のダイヤモンド誌購入もまさにその循環に乗じてしまったからだとも言えます。
こうなって来るとWeb上の個人メディアとマスコミとの境界線がぼやけてしまうと言った慎重論やマスメディアと個人との、癒着と言う意味での繋がりの可能性と危険性を問題視する論議が勃発しそうでもありますが、私としては個人メディアが出版産業に対するマスコミの影響力を上回りつつあるという側面の重要性を感じざるを得ず、また尚更Web上の情報については個人個人がきちんと判断を行なって取捨選択する事が大事な世の中になって来ると改めて思う次第なのです。
少し話は飛びますが、昔旅をしたアラブの国ではタクシー等の旅客サービスや品物の売買の場合でも、売り手と買い手による互いの価格面での歩み寄りを経た後に双方が納得して初めて商行為が成立する事が当たり前でむしろ自然な事*3でもありましたが、それは言わずもがな交渉と契約というプロセスでもある訳です。
値段が高いから安くしろと切り出す事は、それに慣れておらずまたお金の事でもめる事が美徳に反すると考えがちな私の様な古い日本人にとっては苦手な事かもしれませんが、外交と言う諸外国との交渉やグローバライズされた経済活動に組み込まれている日本に生きるものとして、溢れる情報に対する判断力と表現力を含めた交渉術というのは、今や否応無しに身につけざるを得ない能力であるとも思います。
そういった意味では、これまでの様にマスコミがお金をかけてブームを作るのではなく、個人メディアが今まで以上に影響力を持つ事はむしろ歓迎すべき事であり、一般消費者が“学習する”良い機会でもあると思う訳です。さらに、これもCGCMの大変良い例である事も間違いはないでしょう。
ダイヤモンド誌の記事では勝間和代氏が特集の中心にあり、氏は特集の中でブログやネットコミュニティの重要性、なかでも情報を与える(giveする)事の人脈形成への寄与について述べていましたが、あまり検索エンジンに整合的でないiWeb.Macからの脱却のきっかけは実はこういう所にあったりもするのでした。

さて、最後は人との別れです。

サバニ帆漕レースやヨットを通じての海の友人でもあり、また3年間に亘って同じ夢を共有してくれて来た当社の営業担当役員が1月末日を持って退任する事となり、ハードウェアビジネスが得意な彼*4の経歴を活かしての別の職場への移籍となりました。
彼の辞任に関しては代表である私の不徳の致す所としか言いようはないのですが、なかなか思った様には進まない事業を共に何とか開花させようと歯を食いしばって来た戦友には、どうか次の職場とビジネスフィールドでは精一杯に暴れて欲しいと願うばかりです。
今はただ、これまでの彼の奮闘努力に対して心からご苦労様、そして有難うという気持ちで一杯なのであります。

トップ写真:事務所のスペースの関係から泣く泣く手放したKAZI誌の一部。夢と想い出が詰まったコレクションでした。

*1:サイトを移転して僅か2〜3日しか経っていませんがGoogle検索で「メディアの民主化」での検索結果が上位5位、「サバニ帆漕レース」が上位10位にランクインされました。何とも複雑な気分です。

*2:32頁、今どきのベストセラーは売れるべくして売れる!より

*3:日本での家電製品等のオープンプライス化も一時は同じ事かと思った事もありましたが、実際には違いました

*4:当ブログのトップイメージ写真中のサバニ船の一番前が当人、ちなみに一番後ろの舵取りが私です。