CGMはコンテンツだけではない、と思う


何を今更と思われるかもしれませんが、パソコンというものは使い込めば込む程に本当に便利な道具であると実感する事が良くあります。

私の愛機はApplePowerBook G4(Titanium 800MHz DVI)というモデルで、考えるといつの間にか4年以上も使い続けているのですが、今のところはこの機械に対する不満は殆どありません。もちろん、少しボディーの塗装が剥げて来ているPowerBookは初期状態のままではなく、ハードディスクも40->80->120GBへと増設し、メモリは512MB->1GB、最近はDVDも作成出来る様にドライブを入れ替えるなど工夫を重ねつつ、たった今も飛行機の中で新しいバッテリーに感謝しつつ実に快適に作業をこなしています。

私のこのパソコンは、私にとっての全音楽ライブラリであり、数万枚に及ぶ写真アルバムであり、ビデオ編集機であり、DVD作成機であり、DVD/ビデオの再生機であり、カレンダーであり、プレゼンテーション機器であり、地図帳であり、図面や書類を作成するキャンバスであり、楽器演奏の際のエフェクタであり、そして通信機器であり時には電話機そのものでさえあります。ここまで長期間、しかも多岐にわたって使い続けているわけですから、機器固有の癖には慣れていますしOSの動作速度や機能にも満足しており、問題点が発生したとしても基本的には自分で解決して来ています。

ただし、例えば新しくインストールしたアプリケーションの処理の結果がどうしてもおかしいといった時などは、やむを得ずヘルプをお願いする事になります。その相手は往々にしてアプリケーションの製造元ではなく、実はオンライン上の情報である事が殆どです。

私の経験として、製造元から有益な情報が得られ「丁寧適切なサポートを有り難うございました」と心からお礼を言えた例は残念ながら全体の一割もなく、往々にして気分を害されて結局は得たい情報が得られなかった事が多いからでもありますし、それ以上にオンライン上の各種書き込みの多くが、私と同じ立場のユーザが同じトラブルに遭遇した際の対処方法が同じ目線で書かれているため、結果として何倍も役に立つからです。
そもそもパソコンの様に、メーカの想定外の実に様々な形で利用される発展途上の製品のトラブルについて、メーカの従業員よりも圧倒的に数が多いユーザコミュニティの方がより詳しく知っていることは自明の理でしょう。

これは、紛れも無くCGM(Consumer Generated Media)の一つだと思います。

色々なサイトを訪れた際に、Web2.0の大きなトピックはCGMの普及であり、CGMの具体的な例としてBlogや、Blogの仕組みをベースにしたSNS、そして写真共有サイトやYouTubeに代表される投稿ビデオサイトが紹介されている様に感じられます。特にこれらの考えに異を唱えるつもりも反対するつもりもありませんが、これはWeb2.0という事象のある一面を説明しているに過ぎない様な気がすると同時にちょっとした違和感を感じています。

そもそもメディア(media)とは「媒体」を意味する(medium)の複数形です。少なくとも、コンテンツそのもののみを指すものではないはずだと思います。

Web1.0時代はビジネス的にはマスメディアが作り出したコンテンツの流通媒体として機能していたインターネット、次にWeb2.0時代は消費者がメディアを作り出すという図式だけではなく、Web1.0の前の黎明期は、規模は違えども例えば「mosaic」という初期のブラウザによって研究者が情報発信や情報交換をするまさにCGMそのものであったと考えられるのです。

では一体その頃と何が違うのでしょうか?

私は、コミュニティを自己成長させ且つまさに網の目の様に個々のブログサイトを結びつけて行くコメントやトラックバックの存在、そして溢れかえる情報の取捨選択を可能にするRSSという統一された概略情報の記述形式の存在、だと思います。この場合、RSSブラウザは購読しているサイトのRSSの更新を定期的にチェックして、新規のものがあればダウンロードしておくといったまさに「媒体」として機能している、と見る事は出来ないでしょうか?

前述の製品製造後のパソコンサポートに限らず、例えば以前からある「たのみこむhttp://www.tanomi.com/)」の様にユーザが欲しいものを共同で企画してメーカに製造を依頼するサイトがありますが、これは製品製造前のマーケティングを行なっている例であり、コンテンツとメディアが上手く融合したケースだと思います。最近では、エニグモと言う会社が先月スタートしたfilmo(http://filmo.tv/)というサービスも、様々なBlogを見る限り評価が分かれているようですが、ユーザが映像制作や発信をすると言う意味においては私は面白いアイデアだと感じています。

写真:長年連れ添っているPowerbook G4。この時は大変大きな医療系学会の舞台裏で、ほぼリアルタイムな手術映像のネットワーク配信を行ない、画像処理等で活躍してくれました。