クロスメディア禁止法案

CATV局を代表とする地方の放送メディアには、その母体や株主として新聞社が関与している事が多い。詳しく統計を取った訳ではないが、感覚的には、当社と何らかの形でお付き合い頂いているCATV局の1/3程が新聞社との資本関係を持っているのではないだろうか。
総務省が14日に打ち出した、新聞社が放送局を支配する「クロスオーナーシップ」を禁止すると言う考えをウェブ(例えばここ)で見つけて、最初に思い浮かんだのがそんな地方のメディアの事だった。

その記事によると、原口総務相が打ち出した考えは、特にジャーナリズムの観点に立った場合の、新聞社と放送局のクロスオーナーシップが言論の多様性を阻害するという可能性を考慮し、新聞社の放送支配禁止を法案化しようと言うもの。これに対して、既存の大手メディアは「黙殺」という手段に出ており、民放連が大きな騒ぎにならないうちに潰しにかかるであろうとしている。

例えばわたしもたまに関わる事がある政府・自治体の情報化施策等の場合は、中央の動きがやがて地方に拡散する事が常であるが、この法案が現実の物となった場合もそれと同様に、大手メディアと地域メディアが一括りに議論される事が予想される。その際に、疲弊する地域を支えて来た地域メディアは、生き残りをかけた更に熾烈な闘いの場に駆り出される事になるか、海外資本等のターゲットとなる事は明白である。

数年前の事だが、夕刊を時間内に、或いはそもそも届ける事が出来ない地域に対して、アナウンサーの紹介による記事のダイジェスト版をCATV網を使って配信するといった実験を行った事がある。それは、新聞社の社屋のワンフロアにあるCATV局でエンコードした放送品質のデジタルビデオを、サーバを介して隣の市のCATV局にて送り届けるというもので、刷り上がったばかりの夕刊が持ち込まれたCATV局内のスタジオでの映像を如何に早く且つ確実に届ける事が出来るかがポイントだった。圧縮と伝送に要する時間が放送スケジュールにそぐわなかったため、残念ながらこの実験は試みだけで終わってしまったが、そんな新聞社と放送局の連携も資本関係の希薄化によって変わって来るのは必至だろう。

仮に新聞社 - CATVの親子関係を縦とすると、地方や県をまたがってCATV事業の効率化を図ろうとするMSOは横の関係という事が出来る。この縦の関係が禁止される事になった場合に、前述の様に海外資本のターゲットとなるか、或いはより一層、横の連携が加速するのではないだろうか。

トップ写真:1月と言えども天気の良い日は海沿いに人が集う。横須賀市の馬堀海岸にて。