泣きっ面と巻き藁に蜂


自宅を抜け出して、弓の稽古に行く。この日は仕事の関係で断念せざるを得なかった弓友会の合宿練習の真っ最中だった為、道場には5人程の先輩諸氏が居るのみ。
暫く稽古を休んでいたため、いつもの弓が普段より強すぎると感じている私は、矢数を増やす為に巻き藁室に籠りつつ、射を繰り返す。

目の前にある巻き藁に刺さる矢は、時に真っ直ぐ、ある時は斜めと、少しも一定しない。少しずつ力を消耗し、徐々に引き分けが苦しくなり始めた頃に、それは起こった。

刺さった矢を抜こうと、巻き藁に添えた弓手に、畳針でも刺されたかの様な激痛が走る。
保護色になっている為に殆ど眼に入らなかったが、何と巻き藁に蜂がとまっていたのである。矢所が後、2cm左にずれていたら間違いなくその蜂を射抜いていたと思っても時既に遅し。徐々に腫れて熱を持ち始めた左手を気遣いながら、トボトボと道場を後にした冴えない一日であった。

トップ写真:この巻き藁に蜂がとまっているのを見抜ける人はいるだろうか?ちなみに矢はだらしなく斜めに刺さっている。