ネット業界と企業理念

一週間程の周回遅れの話題かもしれませんが、先日のmixiの約款変更に対する利用者の反発は収束する事なく、今なおこの件に関するニュースが後を断ちません。先ほど立ち寄ったコンビニに陳列されていた新聞には、同社の株価が急落したとの見出しが大きく印刷されていて、私としては「この様な報道が更に株価に影響して行くんだろうなぁ」と思うとため息が出てしまいます。ほんの5年前には誰もなし得る事の出来なかった同社のサービスを、決して日本の立派な大企業ほどには経験が豊かでない経営陣やスタッフが一生懸命に日本一にまで押し上げ、そして日々維持運営している姿を容易に想像出来る私としては、この様な鬼の首を取った様な報道の姿勢には少なからず疑問を感じざるを得ません。


但しその一方では、例えばITmedia に詳述されている「mixiの釈明」にある様に、約款変更に関する説明は如何にも苦し紛れである事も事実です。知的所有権に関しては、これまでの業務の中で少ないながらも触れる機会を持つ事が出来た私は、「上位概念に逃げる」という考えを知っています。これは特許出願の際に少しでも多くの権利を包含出来る様に少しでも広義な意味で出願するテクニックとも言えるもので、例えば「棒状の物が筒状の物に挿入される」と言う表現では棒状の物しか動いてはならない事になる為、「筒状の物が棒状の物を被覆する状態になる」という表現の方を良しとする考え方です。また、今回の事例に良く当てはまると思うのですが、特許出願や他社との契約書作成の際には、「表現に逃げるのではなく、今あなたが言った事をそのまま書きなさい」と指導された物です。


つまり、mixiがその主張通り、今回の約款変更を本当にユーザデータのバックアップや圧縮と言う事にのみ主眼を置いていたのであれば、上位概念に逃げる事なく、且つ意図した事をそのまま明記する必要があったのです。もしかして万が一利用者が気付かなければ、取沙汰されている様に出版も含めた二次利用権も得られるかもしれないと言う思惑が少しでも働いていたのであれば、残念ながらこれは同社が真摯に反省をすべき事なのでしょう。


さて、漸くRevverhttp://revver.com/)の売却先が決定したとの報道がありました。CNET Japanの記事にもある通り、私自身にとっても余り馴染みのないLive Universe社が最初に名乗りを上げ、そのまま買収先として決定したとの事ですが、同記事中にある「同社が(危機的状況から)救われ、離散することもないということを知って心から喜んでいる」という従業員の心情は察して余りある物があります。もともとRevverは、ブランディングには成功していたYouTubeが自らの収益構造やビジネスモデルの確立方法を模索していた頃に、Fame TVという放送事業者と映像コンテンツのクリエータと自らを含む3者で広告収入を配分するというモデルを掲げて動画共有サイト事業に参入した企業であり、そのモデルの実現や成功の可否については大きな注目を集めていたと聞いています。残念ながら予定通りの視聴者を集められなかったが故に単独での事業継続を諦めざるを得なかったと言う事なのでしょうが、広告モデル一辺倒、或いは大企業だけが結果として収益を上げる事が当たり前の業界で初めてクリエータの収益を確保し実現しようと試みた、その心意気や意気込みには大いに共感をしていた物です。是非、今回の買収を再出発のチャンスにしてもらいたいと切に願うのでした。

トップ写真:春の東京タワー。徒歩で打合せに向かう道の途中で撮影してみました。