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飽食の島

貧乏学生だった私にとっての当時の最高の贅沢は、辻にあったステーキハウスの定食と、海人修行をしていた辺戸名の食堂のボリューム満点の肉そばだった。それから20数余年。カレーライスにライスを注文する程の食欲は遠い昔に失ってしまい、人様より少し多めの生活習慣病と付き合いながらの生活を送っている私には、沖縄に来ていつも目に留るものがある。それは、まるで量を競うかの様な町中の定食屋の料理である。

例えば沖縄そば定食に、十分な量のそばに加えて、ジューシーと、チキンカツ・刺身・ポーク卵等の副食が付いて来る。今の私の2食分を優に超えるそのボリュームにはただ圧倒されるのみだが、私と同世代のサラリーマンがそれをペロリと平らげている事に2度驚かされるのだ。

適正な食事やカロリーの量に関する知識を少しでも持っていればわかる事だが、前述のそば定食は、南極越冬隊が必要とする程の明らかなカロリーオーバーであるばかりか炭水化物に偏り過ぎていて、余程の運動でも消費する事は困難だ。沖縄がかつての長寿の島の称号を失ってしまったのは、決して消費される島酒の量に牽引されるだけでなく、この様な食生活も深刻な影響を与えているからに違いない。

長い人類史上、満腹の食事が可能になったのはここ50年の事に過ぎず、生物学的に見てもカロリー超過摂取に対応する進化は、気の遠くなる世代交代を待たなければならない。人間の体は今日の食べ過ぎに悲鳴を上げ続けているのだ。

平日は水泳、休日にはサバニを漕ぐという生活を続けている私でも、皆さんの半分の量の食事で十分な満足を得る事が出来る。ご自身の健康とご家族と、そして沖縄の発展のためにも、食事の仕方を今一度見直して頂きたいと思うのである。


琉球新報 2011年12月1日 コラム「南風」より)