沖縄そばと泡盛

琉球新報のコラム「南風」の寄稿で没にした原稿その2。未完成で少々荒削りですが...。

昔、法事で暫く那覇に滞在した後に横浜に連れ帰った長女が「横浜そば」を食べたいと言いだして笑わされた事がある。皆で一緒に食べた美味しい沖縄そばを横浜でも食べたかったのか。

琉球大学の級友の半数は内地出身者、入学当初は沖縄そばが好きでなかった者は多く、大好物の足テビチや沖縄そばを実は私も当初は好まなかった。幼い頃から沖縄に親しむ機会を持つ我が子を少し羨み、また子供ならではの順応性に感心する。
ところで内地で食べる沖縄そばは概して高価である。ソーキの固まり一つ載せたそばの値段が八百円もする事は珍しくない。また、沖縄料理屋で飲む泡盛もコップ一杯で五百円は安い方、コモディティーズ化し得ない沖縄発商材の流通戦略不在の縮図がここにある。八百円の他店の料理の手の込み様と比べると、残念ながら沖縄そばに分が悪く、本土の沖縄料理店が一部の熱烈な沖縄ファンに依存している現状が垣間見える。私に島を離れ内地で暮らす彼らを誹謗する意図はなく、ただ官民一体の取組みや工夫の余地が大いに残されていると思うのだ。
道路を掘り返し観光客の憧れの的の海を汚す工事を繰り返すのでなく、税金優遇や商材の輸送コスト補助等により、例えば本土の都市の駅周辺にある「立ち食いそば」の業態を模して、そば三百円、泡盛一杯を二百円で供する、多店舗展開は出来ないだろうか。
実現するには、抽象的尺度である味の担保や、酒造組合の理解と協力という難問もあるだろう。だがここには、そば・うどん・ラーメンに続く、第四のメジャーな麺になり得る可能性を秘めた沖縄そばの野望がある。そばや泡盛が独特の匂いと癖を失ったと嘆く向きも多いが、逆に全国展開に活かすチャンスではないかと、暫し夢想するのだった。