地域のブランディング

今の若い世代には想像もつかないだろうが、インターネットのブラウザで表示される情報は文字だけという時代があった。これはネットワーク通信に負荷をかけない為で、当時はメールに添えるサインも行数を控えていた程である。

それから四半世紀以上の時を経て、画像はおろか動画もふんだんに流れるようになったインターネットは、新聞・ラジオ・テレビに次ぐメディアとして確固たる地位を確立しただけでなく、従来は情報の受け手側だった人々にとって情報発信の手段にもなった。いわゆるCGMという考え方である。
その一方で、洗練された文章や画像で伝えたい情報を表現する事の難しさは変わらずに存在し、私はそんな非常にアナログな要素が今後のIT業界のビジネスの鍵になってくると感じている訳だが、それにも増して重要なのは情報のオリジナリティーである。
サバニや音楽や食べ物等、日本の他の地域に無い独自の文化を持つ沖縄には、インターネットを利用した情報発信という面では既存の大きなアドバンテージがあり、それを特産品の拡販や観光客の誘致に今以上に活かさない手はない。
しかしその現状は、例えば公的な観光情報サイトを見ても、残念ながらおざなりで一辺倒なものが多く、決して褒められたものではない。また動画共有サービスやフェイスブック等の新しいサービスを上手に活用して地域をアピールしているのは、資金的に余裕のないはずの個人の方がむしろ多い。
行政機関はこうした草の根の地道な努力や熱意を上手く取り入れるべきではないか。アクセス数によって報奨金を出すのも面白い。この様なCGMが地域のブランディングという大切な役割を担っている事を念頭において、情報発信の枠組みを再検討すべきであると考えるのだった。
琉球新報コラム「南風」への寄稿の没原稿)