敷居

とある案件の作業をしている。

内容はウェブサイトの全面リニューアルで、そこに別に運用されているブログやネットショップを、操作方法やLook&Feelを含めて統合する事も含まれている。

ブログやネットショップはCMS(コンテンツマネージメントシステム)と呼ばれる仕組みの上に構築されている事が多いが、その扱いには一癖も二癖も理解しなければならない事柄が多々存在する。

例えば今回の案件でもターゲットとなっているMovable Typeで作られたブログサイトの多くでは、画像をクリックした際に画面の左上に別のウィンドウがポップアップで開くが、これは標準のテンプレートの標準的な設定になっているが故である。
このような野暮な事はしたくないので、画像をLighbox*1で表示させる様に改造してみることにしたが、あれこれ調べた挙句に内部のPerlプログラムを改造せざるを得ないことがわかった。LightBoxを組み込む事自体はごく簡単な事だったとしても、それを自動的にhtmlのタグに組み込む事は相応の知識と作業が必要となってしまう。

ちなみに今回の作業内容を備忘録的に記しておくと...。

作業前のソース( ./lib/MT/asset/Image.pm ※Movable Type 5.04の場合)

            $text = sprintf(
q|<a href="%s" onclick="window.open('%s','popup','width=%d,height=%d,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">%s</a>|,
                MT::Util::encode_html( $popup->url ),
                MT::Util::encode_html( $popup->url ),
                $asset->image_width,
                $asset->image_height,
                $link,
            );

を以下の様に修正した*2

            $text = sprintf(
q|<a href="%s" rel="lightbox[group]" title="" >%s</a>|,
                MT::Util::encode_html( $asset->url ),
                $link,
            );

また、往々にしてスタイルシートが複数に分かれているだけでなく、スタイルシート、インラインスタイル、そしてスタイル要素とスタイルを指定する方法が分散し過ぎてしまっているために、多岐にわたった修正やカスタマイズを要求される事になり、それぞれの整合性を正確に把握する事には非常な労力が必要となる。
これらの事に加えて、ブラウザという限られたキャンパスに効率良く効果的にコンテンツを配置していくにはデザインのセンスも要求される。

こういった作業は、商品の開発や製造に多くの時間を割かなければならないスモールビジネス業者が簡単に超えられる敷居ではない。

そこで、例えば一般的なMovableTypeのカスタマイズ料金を調べてみたところ、わたしから見ても美しくセンスの良い仕事だと感じた場合で、その料金が50万円という例もあった。ネットショップのカスタマイズも同様である。
中小企業がこれらの投資に踏み切る為には相当の負担がかかる事だろう。

中には「5,000円でウェブサイトを作ります」という様なサービスもあるにはあるが、その出来映えたるや、まさに「安かろう悪かろう」を体現しているのみに過ぎず、この様な会社の「顔」となるウェブサイトを公開している企業が気の毒にすらなってくる。いくら作業を効率的にこなしたとしても、5,000円の作業範囲には限界がある。

インターネット接続やサーバのホスティング等のインフラとなるサービスや、ハードウェアは加速度的に安価になって来ているとはいえ、そこで扱うコンテンツの取扱方法や作成方法に関して、地域のスモールビジネスが恩恵を受けているとは、まだまだ言える状況ではないのでは無いだろうか。

*1:LightBoxに関しては飽きた等の批判的な意見も多いようだが、キーボードで複数の画像を送りながら見るには良い表現方法ではないだろうか。

*2:もちろんjsファイルを本体のhtmlに読み込ませている事は大前提である。