気仙沼

まるでCGで作られたかの様な東北での津波の映像を見てから一ヶ月半。
渋滞の中、午後9:00を既に過ぎてようやく気仙沼に辿り着いた私たちは、市郊外のパーキングエリアでキャンプを張り、未だに冷え込む夜気に塗れて夜を明かした。朝5時に起きて簡単な朝食で暖を採った後に、約束の時間まで暫し被災地を見て回ることにした。

そこで見た巨大な「撮影セット」の中で、私たちは言葉を無くして立ちすくむ。
映像だけでは決して伝わる事の無い、半ば乾燥したヘドロが放つ異臭や、周囲の瓦礫が撤去されて一人取り残されたかの様な陸上の巨大な船体の存在感、そして泥濘の中自分の場所へと向う復旧作業の人々の足音が私たちを包み込んだ。

現地に多大な迷惑をかけていると言う物見遊山の見物客と自分たちはどう違うのかと自問自答を繰り返しながら、約束した打合せの場所へと向う私たちの車を自衛隊の検問が制止する。

事情を説明して通行許可を得た後に通行止めのゲートをくぐり、黒く焼け焦げた多くの船を横目で見ながら、出発から24時間近くの時間を経てようやく現場に辿り着いた私たちを待っていたのは、とびきり明るく優しい笑顔だった。