瀬戸内の海

京都に住んでいた子供の頃には、家族ぐるみで行き来していた親戚の家に住む仲の良い従兄弟に会うために神戸に頻繁に訪れた。また、高校の終わりには親しくしてくれていた大阪の先輩とともに、坂本龍馬に憧れて高知を旅した事もある。

そんな限定された経験によって創られたからか、瀬戸内海と言えば私にとっては茶色に汚れた神戸港の海であり、四国の海は黒潮が押し寄せる太平洋岸のイメージしか持ってなかった。

今回の四国への出張のために選んだルートは、経費の節約という面もあったものの、神戸で知人とミーティングをしたかった事もあったため、羽田ー神戸間をSKYMARK、神戸ー岡山を新幹線、岡山からは特急としてみた。
そんな初めての経路は、当初は思ってもみなかった素晴しい体験を私にもたらしてくれた。そう、明石海峡大橋から望む瀬戸内海の景色である。

地元に住んでいる人達にとっては極ありふれた日常の風景である事には間違いがないだろうが、大小様々な船が行き交うこれ程までに美しい海は、前日の徹夜で寝不足の私を興奮させ、まるで子供の様に窓外の景色に釘付けになってしまった。そして、遥か太古の村上水軍を想起させ、沖縄のサバニ同様に地域オリジナルの勇壮な和船を復元してこの海に浮かべる事が出来ればどんなに素晴しい事だろうかと、一人妄想をしてしまった。

トップ写真:車中から撮影した瀬戸内海。