写真に替えて

遠く左方眼下に目的地である神戸空港を臨みながら、姫路の手前上空付近で急旋回した機体は、登ってまだ間もない太陽に向かって徐々に正面に進路をとる形になってゆく。

陽の光に温められ始めた1月の冷えた瀬戸内海の水面は次第に靄を発生して、彼方に広がる目覚めたばかりの大阪の街をかき消すように立ちのぼり、そして右手の淡路島をくっきりと浮かび上がらせる。更に後方から降り注ぐ光はキャンパスの隅々に行き渡るように彩りを添えつつ、同時に島の陰影をもくっきりと際立たせる。
海面を滑るように往く船は思い思いの方向に伸びる幾筋もの曳き波を従えて、凪いだ海面の穏やかさを殊更に際立たせている。
動く水彩画のような窓に映し出され次々に移り変わる景色は、機外の朝の澄んだ空気がじかに頬に触れている一瞬の錯覚をもたらした後に、明石海峡大橋を前方に投影する事によって、機が最終の着陸態勢に入った事を告げた。

トップ写真:ポートアイランドから臨む神戸の街並。