アンティーク化していく文化

名護での仕事が予定より早く終った事を幸いと、以前から気になっていた名護民族資料館に行ってみた。この資料館の事は少し前にインターネットでたまたま見つけて知ってはいたが、遠方故になかなか行く機会に恵まれないでいた。

道を聞きながらやっとたどり着いた同館での、私が最も興味があるサバニや漁具関係の展示は極一部であったため少しだけ拍子抜けする事となったものの、昔の家庭での日常生活や農業、工業、そして漁業に関連する実に多岐に亘る古い道具が所狭しと並べられていて、好きな人にはたまらないアンティークの宝庫だと思った。

解りにくいかもしれないが、同館に収蔵されているサバニの写真である。


さて、一通りの見学を終えて、わざわざ淹れてくれたコーヒーを頂きながら館長と雑談をする中で、以前から私のサバニに備え付けたいと思っていた木製の「ユートゥイ」が手に入らないものか、ものは試しと尋ねてみた。
曰く、資料館を作る際には数千円の謝礼で手に入っていたユートゥイも、今では2万円を超える値が付く事もあるため、既に十分な展示物を確保している同館としては、持ち込まれる話を都度断っているとの事だった。
大切な先人の文化を理解して継承していく事の重要性は、私のような人間でも昨年から今年にかけてのサバニの修復を通じて体験し感じた事であるが、今回知ったユートゥイの話のように、もしもそうした道具が貨幣価値と置き換えられて商品として流通していくとしたら、その事には一種の違和感を感じざるを得ない。
が、一方では工芸品・美術品の域に達していると言っても決して過言ではないユートゥイや、糸満ミーカガン、そして防水の煙草入れでもあるウミフゾーなどは、もしかするとそうなる事によってこそより多くの人の目に触れて理解を得、また大切に扱われて保全される可能性も増すのではないかとも複雑な思いで考える訳である。

資料館に併設されたお土産コーナーでは何を販売しているのか尋ねたところ、「ゴミの様な物ばかりですよ」との答えが返ってきたため思わず噴き出してしまったが、この人の良さそうな館長がコツコツと積み上げている民間の活動が、実は文化の保全には大きな寄与をしているのかもしれないと思いつつ資料館を後にした。
ちなみに、綾風に備え付けのユートゥイは、水色の漂白剤のポリ容器の一部を切り取って加工したもの。沈をする事も多い我がチームにはまだまだ、この軽くて丈夫で安くて気兼ねなく使えるハイターユートゥイのほうが適している事は言うまでも無い。

トップ写真:私設資料館である同館を入り口付近より臨む。