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長雨


大学生活で沖縄を知り、嫁いだ妹やビジネスの関係で北海道を知った私は、誠に幼稚な発想ながら南から順に梅雨入りする日本列島を北上して梅雨を避ける生活をしたいと考えたり、同様に日本を移動しながら少しでも長く桜を見ていたい等と夢想した事がある。そんな遠い昔のちょっとした断片的な思考の記憶を呼び起こしたのは、今回の台風20号である。

糸満でのサバニレース出場と言う折角のチャンスを得て訪問した沖縄では、遭遇したこの台風によって雨と風に見舞われ続けた訳であるが、その後に台風が本土に針路を取って関東地方にちゃんとやって来たからである。普通ならばその被害は1日か2日で済むものを、台風と一緒に移動する事になってしまったこの20号には実に一週間近くも付き合わされた事になる。

さて、全てが絶妙なバランスの上に成り立っている自然界では、この台風も決して無用の長物ではない。誰もが知っている貯水効果だけでなく、台風が海水を撹拌する事によって海水温の上昇を抑制するという働きも最近では一般的にも知られる様になってきた。数年前に久しぶりに潜水をした沖縄本島北部の海で、パディの漁師の親方から「やけに海が白くないか?」と問われた時に、確かに不自然に白く彩られていると感じた海中の風景は、正に台風が少なかったその年に海水温が異常に上昇して発生したサンゴの白化現象によてもたらされたものであった。如何に異常気象が取沙汰される今日においても、この台風の例の様に、不要な自然現象などあろうはずも無い。

と言う訳で、今回の台風との長いお付き合いは、四季折々の表情に恵まれた日本で梅雨から姑息な手段で逃げ回ったり、短い花の命を感じる風流も解する事無く根無し草の様に移動しようという考え対する、何らかの戒めだったのだろうかと思うことにしておこう。さあ、これからいよいよ本格的な秋である。

トップ画像:台風20合の針路。Yahoo!Japanから。