日本、自給自足の条件


選挙を控え各党の政策に対する評価はそろそろ出尽くし、投票日まで如何に議員の余計な発言や政策に対する認識のズレを世間に露呈させないかが、執行部の最大の関心事になって来ている。
そんな中、フィルモア・アドバイザリーは、自社サービスの数値データのグラフ化・共有サイト「vizoo」を使い、各党のマニフェストを数値化しグラフで分析すると言うアプローチに基づいた記事をダイヤモンド・オンラインに掲載した。そのテーマは農業政策の比較である。

詳しくは実際の記事を参照頂くとして、分析の背景にあるのはやはり、農業従事者、特に兼業農家の減少と自給率の低下である。

Vizooからのグラフデータ。縮小表示しているので隠れているかもしれないが、黄色が英国、そして赤が日本のデータである。

先日は、産經新聞の2030年と言う特集の中で触れられていた漁業人口の「堅調な」減少について感じた事を述べたが、事情に詳しい友人によると増加する事のない漁獲高に対して拡大を続ける需要を補っているのが養殖であり、その割合が世界的に見て40%を超えるという現状では漁師が増える/減らない余地は無いと言う。人件費も高く、海岸をコンクリートで埋め尽くした日本の養殖だけで需要を満たす事が出来ないが故に、我が国の水産業は自ずと海外からの輸入に頼らざるを得なくなり、その事が国内の魚の値段を下げて漁師の生活を苦しくすると言う負のスパイラルに陥っている。

前述の農産物同様に、日本はこれだけ海に囲まれた国土を持ちながら水産物も自給自足出来ない方向に突き進んでいるのである。

一方で、例えば農産物の自給率が100%を超える米国等は、飼料や肥料としての農産物や、或いはその二次的生産物である食肉を輸出する事によって自国の産業を保護しようと、国際的な圧力や時には自然保護という大義名分を駆使して日本の食卓に関与し続けている。
来年3月に開催されるワシントン条約の締約国会議でモナコがクロマグロの全面的な禁輸提案を行なう方針を打ち出している事の背景には、純粋に絶滅危惧種を保護すると言う目的以外の何らかの要因もあると思えてならない。

日韓サッカーワールドカップの開催時に韓国は犬食をあからさまな欧米諸国からの上からの目線で批判された。彼等は、マグロのみならず鯨に関しても、自国の産業保護と言う目的に自然保護と言う衣を着せて干渉する。そして、そのような国策を実施する政治家を選択しているのもその国の国民である事に間違いは無い。
我々にとっても、食料自給と言う観点に立って農水政策を考えつつ、各党の政策を真剣に評価する事は益々重要になる。無駄をなくして食べ物を捨てない事と同様に、それこそが自給自足への重要な一歩ではないだろうか。

トップ写真:見事に育ったオクラ。壱岐の母親生家の畑にて。