不要な道路と必要な道路


道路行政は往々にして、特に政治家による地元土木・建築産業へのコミットやその業界との癒着を取り上げて、問題視される事が多い。
以前、このブログでも触れた「地域再生の条件(本間義人著、岩波新書)」という本でも論じられていたが、交通網の整備が地方の生活に及ぼす影響は良くも悪くも甚大である。例えば国鉄の民営化がもたらした不採算路線の廃線や便の減少対策は、地域住民の生活インフラを直接的に脅かす事になり、また高速道路や高速鉄道が近接する都市圏への住民の流出の経路になったと言う指摘もある。

これらを背景にした、凍結されていた18の国道建設計画が再開される見通しになったと言う報道に対するブログ界での批判は多いが、果たして全ての計画を一括りにして悪い施策であると考える事は如何な物だろうか。

例えば鉄道を持たず、年中暑い沖縄では各人が自動車で移動する事が多いため、慢性的に随所で渋滞が発生する。この機会損失による経済への影響も少なくはないはずである。渋滞の解消効果が期待出来る329号線のバイパスについては歓迎するべきではないのだろうか?

前述の住民流出の経路となった道路はストローやスポイトに例えられる事もあるようだが、問題は政治家や地元の誤ったビジョンやその場しのぎの判断であり、またそれらの失敗から学習出来ない体質なのである。

私が住む自宅から程近い、三浦半島を一周する遊覧道路を作ると言うおぞましい計画は今でも息を潜めて実行の時を待っている。こういう前時代的で見識に欠けた計画こそ、批判の対象になるべきである。

トップ写真:泊港付近の海上バイパス。ところで陸上の道路だけでなく、水上交通に目を向ける事は難しいのだろうか。