CMの作り方|カメラワークその2

数年前までは3倍がせいぜいだったデジタルカメラに、8倍や12倍といった望遠機能がつく事は既に珍しい事でないが、望遠機能の恩恵によって、撮影が困難な被写体を撮れたり、またアップにする事によってより迫力のある画像を残す事が出来るのは言うまでもない。


が、ことビデオに関しては少し事情が違うので注意が必要ではないかと思う。

パソコンによるデジタル環境での映像編集が一般化し、またここではそもそも如何にCM映像を美しく作成するかと言う事をテーマにあげているため、即ちビデオカメラで撮影した動画は数十秒〜数分の映像作品を構成する部品、或いは素材と捉える事としたい。

映像素材を扱ったウェブサイトのプレビューをもし見る機会があれば、一目瞭然であるが、ズームやパン(カメラを例えば右から左にふる事)をしているものは殆ど無い筈である。
また、静止画像ならまだしも、ビデオカメラの最高望遠で撮影した動画像は手ブレのためにまず殆どのケースでは使い物にならない。遠方の被写体を撮影する場合には三脚が不可欠であるが、仮に三脚があったとしてもちょっとした振動が画像に与える影響は甚大である。

従って不用意な、ズーム(或いはその逆)中、又はパンの途中の素材は、基本的には編集時には捨てられるものと考えた方が良い。


それでは、ズーム/パンの機能を映像素材を撮影する際にどのように使えば良いのだろうか?またその注意点は何処にあるのだろうか?

  • 被写体を写真として捉える事。仮に遠くの被写体を撮影するからと言って、視聴する側からすればその大きさが頻繁に変わる事は落ち着かない印象を与える。遠景と近景が必要な場合は、それぞれを別のシーンとして捉えて、その中間のズーム時の映像は捨てる事を前提とする。ズームで映像にメリハリや変化をつけようとしてしまいがちだが、逆効果になる事の方が多い。
  • パンの最初(始点)と最後(終点)に、2〜3秒間静止する事。この事によって、前後の映像との親和性が大幅に高まる。また、スムーズなパンのためには、体を終点に予め向けておいた方が良い結果が得られる。
  • いずれの場合も、三脚の有無ではアウトプットに雲泥の差が出る。
  • 最近は、箸で持ち上げた食べ物をアップで撮影にする事によって、美味しさを表現する事が多い。但し、その場合には背景にも気を配らなければならない。

これらは何れも、これまでに見聞きした事や、私が常日頃気を付けている事の抜粋であるが、ズーム/パンをしながらの撮影が出来ないスチルカメラで撮影している様な意識でビデオカメラを廻されては如何だろうか。また、これらの事を意識しながらテレビから流れる画像を見る事も良い訓練になると思う。


次回は被写体と背景について考えてみたい。

トップ写真:今日の紫陽花。携帯電話のカメラによって残せる画像も飛躍的に多くなった。