WBCゲーム、アメリカに勝利する事の意味


鮮やかに決まった稲葉と小笠原のヒットエンドラン、一挙に5点を奪った4回の猛攻よりも、結果として城島の犠牲フライの1点に終わったこの攻撃の方が私には印象に残ったアメリカ戦の快勝。
足を活かし緻密に連携し、計算し尽くされた配球で相手打者を翻弄する日本の野球。パワーヒッターや強肩を活かしたダイナミックで華麗な守備が魅力のMLB。野球とベースボールは違うものだと言う話を一時期頻繁に聞いた記憶があるが、こういった部分が、日本の野球とアメリカの野球のスタイルの違いを上手に言い表しているのではないだろうか。


アメリカのみを取り立てて非難をしたい訳ではないが、スポーツのルールは常に彼等を中心に彼等の為に改正されて来たのではないかとさえ思える。以前友人に聞いた事がある水泳のルールを調べてみたが、平泳ぎの頭が水面上に出ていないといけない(岩崎恭子の金メダル後?)、バサロはいけない(鈴木大地の金メダル後)と、白人が勝てる様に都度ルールを変更して来たその歴史は長いと言う。例えば、大和部屋さんの「水没禁止ルール解説(http://www.page.sannet.ne.jp/yamato99/tech_breast/breast_3.html)」にも詳しい解説が掲載されている。
野球の国際試合においても、例えば前回のWBCでのタッチアップのタイミング問題や、ライトスタンドポール直撃の二塁打(?)などを何度繰り返し考えてみたとしても、正義も公平も自らが基準でなければならないという彼等の思考回路が極めて稚拙なものであるという結論に辿り着く事しか出来ない。


余談かもしれないが、同様に、国際社会における私たち日本人を良く表していると思えるのが、テレビスポーツ番組のキャスターやタレントが例のタッチアップ問題等を暗に示しながら「前回の微妙な判定」と訳知り顔で繰り返す事であり、これには心底辟易とする。一体何に気兼ねしているのか全く解らないが、はっきりと「米国に偏重した身勝手且つ確信的な誤審」と何故言えないのだろうか?


さて、私にとって国際試合の全日本のエースは、全盛期の野茂英雄をおいて他にいない。これは、彼が前述した日本の野球の特徴を最大限に活かしつつも、力と力の勝負でも一歩もMLBの強打者にひけを取らなかったからである。コツコツと単打を繰り返すイチローの野球を面白くない、というMLBのファンが増えていると言う報道を聞いた事があるが、イチローの卓越した技術の捉え方やファンとしてそれを楽しむ感性は、日米間で大きな隔たりがあるのだろう。ルール作りもプレーにおいても、米国では常に卓越したパワーが求められているのではないだろうか?


今日の日米戦は、確かに原監督が涙目になる程の歴史的な一勝なのかもしれない。


一方で、北京で結果を残す事が出来なかった星野ジャパンは、WBCで望外の結果を出した王ジャパンの「スモールベースボール」という保守沈滞からの脱却を図った結果として、GG佐藤を始めとするパワーヒッターを招集したのではないか。緻密さとパワーの融合を目指した星野ジャパンは、しかしながら残念な事に失敗と言う結果に終わり、そして星野が求めたものを手に入れたのが実は私は韓国代表チームではないかと思うのである。日本には投手力で僅かに及ばないまでも、MLBのパワーとアジアの緻密さを兼ね備えた様な韓国のクリーンナップは、今回のWBC参加国のどのチームよりも、私に取っては脅威である。

今回の侍ジャパンに一発で試合を決める様な長打力を更に加えた、そんな星野ジャパンが果たし得なかった力強く面白い日本の野球スタイルを確立する事が、今の日本の野球界の沈滞を打破する事にもつながるのではないかと考える訳である。そしてそれが真の意味でMLBと対等になる事ではないだろうか?


私的な表現ではあるが、発展途上の日本と、一歩先をいく韓国との、後数時間後に迫った熱い闘いが待ち遠しくてならない。そして小笠原でも栗原でも誰でも良いが、日本国中を湧かす事の出来る特大のホームランを期待したい。

トップ画像:WBC公式サイトの「gameday mini」。仕事中の使用を考慮して設計されているのか、コンパクトであるにも拘らず、欲しい情報が上手くまとまっていて大変使いやすい。未だに打率が出ないYahoo!等の一球速報も是非見習って欲しい。