一国二制度


元は学者だったという通信事業者の方と、沖縄の居酒屋で話し込んだ事がある。

それは、九州沖縄サミットを控えて沖縄情報特区の提言書について議論を重ねていた頃の事だと記憶しているが、曰く、既に沖縄は一国二制度を具現化した例であるという。

しばしその発言が何の事を指しているのか判らずにいた私だが、話が進むにつれて那覇空港に隣接されたFTZ(フリートレードゾーン)や、空港内の免税品コーナーの存在に立脚した考え方であると理解した。

一国二制度の根拠を、異なる税制、沖縄県にのみ許された特権である、と国家としても県として、そして旅行者に対しても大きなインパクトを伴うものであるとその方は捉えているかの様な論調だったが、その時も、そして今なお私には全くその実感を掴むことが出来ない制度であり続けている。

空港からのモノレールに直結した「おもろまち」という駅に、DFSという私にとってはレンタカーを借りる場所に過ぎない、いつも冷房の効きすぎた免税品の集合店舗があるが、たとえ予約をしていたとしても何故か必ず毎回30分近く待たされてしまう配車システム以上に私を辟易させるのが、車を受け取りに行くためにぐるぐると歩かされる免税店の通路である。そして、商品を見ていると言う意味でなく、あくまでも代金を支払って商品を手にしていると言う意味であるが、実は私はそこで実際に買い物をしている人を見た事が無い。


私のようにブランド品に欠片ほどの興味も示さない人間はマジョリティではないのだろうが、しかし南国沖縄に来てまで都会的な服や鞄を買いたいと言う気持ちになるものか、私には全くわからない。むしろ、地元ならではの選び抜かれた良質な特産品が陳列されている方が、よほど沖縄に来たことを実感でき、その事によって旅の開放感を享受出来るような気がするのである。

例えば、駐車場等の整備が十分でないために中々観光コースになりにくい壷屋のやちむん通りからの出展を募ったり、北部や宮古八重山の特産品を陳列しても良いのではないかと思う訳である。


八重山毎日紙の、一国二制度を活用した空港や港での免税品販売を促進すべきであると言う説には首を傾げざるを得ない。県産品や地元の特産品では商品どうしが互いにコンペティティブになるが、ブランド品ではそうならないからさらに良いとも言う。あまり実効力を感じることの出来ない一国二制度を活用する事が、地元の経済を活性化させる、その為の策として最良の選択肢とはどうしても思えないのである。

トップ写真:DFSの玄関。沖縄本島への旅行者の多くが立ち寄る場所。