春暦


海も近く公園も多い、横浜市と言えどもそんな比較的自然に恵まれた土地に私たち家族は住んでいるのではないかと思う。

10数年前に引っ越してきて以来、子供が育つにつれて春の訪れとともに近所を散歩をするようになった結果、我が家にとって土筆が身近に存在する春の代表的な風物詩となって久しい。

今は見向きもしなくなった中学生の長女に代わって、土筆採り等には幼稚園を卒園したばかりの次女が喜んで付き合ってくれる。採って来た土筆の袴を取り除く作業も彼女との共同作業であり、春の週末のささやかな楽しみでもある。

この地に移り住んだ当初、春先に良く探せば土筆が採れると言う事が判った私は大いに喜んだ物だが、一見すると虫の様に見えなくもない料理をした後の土筆の外見に当初は家人も尻込みをしていた。今では家人も「これは美味しい」と好んで食べるようになり、その事がさらに私と次女の土筆採り散歩に拍車を掛ける。

関東地方では余り食材とはならないと聞いた事のある土筆だが、以前仕事の関係で知り合った鎌倉在住の著名な料理研究家の先生からは、春先に鼻水とクシャミが止まらない私に対して「スギナを食べると良いですよ」と、優しく教わった事もある。ほろ苦く、そして季節感に溢れる土筆は、私にとってはこれ以上ない酒のつまみであり続けている。

例年に比べて、土筆のピークが1〜2週間ほど早まったような気がしないでもない今年の春だが、皆さんもいま少し残された早春の味覚を探しに散歩に出かけられたら如何だろうか。

いつのまにか、自宅付近で土筆が採れる場所のほぼ全てを把握してしまった。

トップ写真:ようやく自転車に乗れる様になった次女と土筆取りに。