地域のブランディング

宮崎を始めとする九州の観光産業界は、沖縄に観光客をとられたという被害者意識があると聞いた事があります。堅調な伸びを示す沖縄への旅行客数に反比例する様に九州への足は遠のいているとの見解によるものだと思い、沖縄県宮崎県を例に、それぞれの県外からの観光客数の推移を調べてみました。

県外からの観光客数推移、単位は1000人。各県がウェブサイトで公表している統計資料を改変。


確かに、沖縄県の観光客数は1970年代初頭には宮崎県に大きく水を空けられていたものの右肩上がりに伸びており、ほぼ横ばい或は減少の傾向にある宮崎県に比べて、2000年以降に逆転してしまっているのが良く解ります。ただ、この事のみを持って宮崎への観光客が沖縄に流れてしまっていると言う結露を導きだすのは少し乱暴ではないかとも思うのです。


公私ともに沖縄に縁を頂いている私ではありますが、例えば沖縄に対するイメージとは一般的にはどの様なものでしょうか。沖縄料理や泡盛、青く美しい海とマリンスポーツ、三線と独特の旋律を持つ琉球民謡等々、人によって様々なイメージが呼び起こされる事でしょう。近年、活躍が目覚ましい高校野球、又は夏川りみや安室奈美恵を始めとする同県出身のアーティストを想起されるかも知れません。

一方、最近は仕事の都合で年に数回はお邪魔させてもらっている宮崎については、私の不勉強が原因である事はもちろんの事、沖縄の様に長く住んだ経験もないためか、南国、シーガイア、読売ジャイアンツのキャンプ等の画一的なものしか思い浮かびませんでした。最近は訪宮させて頂く機会も増えたため、驚く程美味しい「地鶏のもも焼き」やバラエティに富む焼酎等が、私のイメージに追加されつつありますが、それでも沖縄県を超えるには至っていません。


沖縄県の場合は、県が推進する様な公的な施策か民間レベルかに関わらず、恐らくブランディングに大きな成功を収めているのではないかと思うのです。
無論、これらは観光産業に携わる方々の様々な努力の結果である事は間違いありませんが、一方では前述の様に音楽産業や飲食業者の本土への積極的な進出等も奏功しており、且つそれらが互いに相乗効果をもたらしていると考えられます。
例えば、良いか悪いかの議論は別に譲るとして、昔は独特の癖があり余りなじむ事が出来なかった八重山泡盛「清福」も、2年前に久しぶりに飲んだ時にはまるで別の酒ではないかと思ってしまった程、まろやかで口当たりの良い泡盛に変貌していました。観光客として八重山を訪れた人が、昔は口をつける事もあまり無かったご当地の泡盛を美味しいと感じるか否かは、リピータの増加にも少なからず一役買っている事でしょう。

さて、先日宮古島を久しぶりに訪問した事を少し述べましたが、島を友人が運転する車で回っている際に、かなり異質な光景を目にしました。突如、視界にヨーロッパの古城の様なものが飛び込んで来たのです。友人曰く、昔ドイツの船が近くの海域で遭難した際に、島の人々が懸命な救助を行なった事に由来して、その史実にちなんだ巨大なテーマパークが建設されたと言う事です。

写真は、うえのドイツ文化村のウェブサイトより


うえのドイツ文化村」というこの施設は、沖縄という地域のブランディングという観点で言えば、関係者には大変申し訳ありませんが全く逆の効果しか産まないのではないかと思います。ドイツを感じるために宮古島に足を運ぶ人が、宮古島に行ったら繰り返しドイツ文化村に行きたいと思う人がどれ程いるでしょうか。


地域のブランディング、成功している県もあればまだまだ途上である県もあり、また同じ県の中でも地域によって成功の度合いが分かれている、難しい問題であると同時に、観光産業にとっては大切な事でもある筈です。当社では、地域からの映像配信という切り口で少しでもこの点に関して貢献したいと考えているのですが、先ずは地域の景観や自然環境の保全を第一に考えて欲しいと思うのでした。
(このエントリーは後日加筆修正する可能性があります)

トップ写真:那覇市国際通りの巨大なお土産店。最近ではこう言った原色の色使いだけで沖縄県をイメージしてしまいます。