総Google化(=Googlize)?

以前から取引を頂いている企業から、大変有難い事に現在の動画投稿・共有サイトの市場動向や技術、そして各サイトのビジネスモデルについての調査と整理を仕事として頂戴しました。
その結果、これ程熱心にあちこちのウェブサイトを見て回ったのはかつてないと言える程、各ニュースサイトやブログ、そして実際のサイトを山の様に手分けをして訪問し、得られた情報をせっせと整理して行く過程でそれぞれが点でしかなかった過去2〜3年のニュースの断片が私の頭の中では理路整然と繋がり合い、米国や日本でのインターネットビジネスに関わる各企業の戦略や攻防の流れを良く理解する事が出来ました。

そうこうするうちに作業に着手して数週間が経過し、その報告書に添付する図面もほぼ書き終え、そろそろ結論や提出書類としての体裁を整えようという段階になって、YouTubeから衝撃的な発表がなされました。

それは、これまでのAPIを大幅に拡張して無償で公開すると言う内容の物です。実際には商用利用に関しては多様な制限があるため即ビジネスで活用するには障害が多いものの、そのAPIを使えば本来はYouTubeのサイトで行なわなければならなかった動画の投稿やコメントの付与、動画プレイヤーのカスタマイズ等の全てを自分のサイトで完結出来てしまうと言う物です。
当社のVojkru P.A.(ボイクルPA)を中心に現在検討しているビジネスには、制限事項があるが故に発表の当初予想していた程の影響はなかったのですが、それにしても思い切った事をやるなぁと、発表から一週間が経過した今でも感じている次第です。

前述の調査報告書の内容は、仕事を頂いた企業との契約の関係で残念ながら公表する事は出来ないのですが、ひとつ感じた事に技術革新や他社との差別化における戦略の稚拙さがありました。例えば、YouTubeでは投稿〜Flash変換〜オンデマンド配信という流れで映像が処理されますが、あるサイトではYouTubeがやっていないライブ配信に特化する事によって差別化を図ると、自社のサービスを位置づけている例がありました。
しかしながら、問題は同様のサービスをYouTubeがやらないと言う保証は何処にもないことであり、その点ではそのサービスに対して投資をしている金融機関も含めて、ビジネスが実に危うい基盤の上に成り立っていると思わざるを得ないのです。
今回のYouTubeによるAPIの公開に関しても、動画配信のプラットフォームを提供している企業にとっては驚愕すべきニュースである事に変りはないでしょう。
利用者に容易に訴求する事が出来るサービスの提供、或は解りやすく斬新なビジネスモデル、或は知的所有権による技術やサービスの保護等々、今後のサービス提供事業者は更なる切磋琢磨が必要になってくる事は言うまでもありません。

さてご存知の様に約1年半前にYouTubeを買収したGoogleは、従来のウェブ上のコンテンツの検索サービスに加えて、ブラウザ上で稼働する業務アプリケーション、自分のPCやMac上で動かすアプリケーションやユーティリティー、更には携帯機器用のOSまでを開発するに至っており、そのサービスの多様性やクオリティの高さ、そしてデファクトスタンダードであるが故の知名度や各サービスの相乗効果に後押しされて、益々ウェブや通信の世界で影響力を増して行く事が予想されます。少なからず同社のサービスの恩恵を受けている私と当社ではありますが、あまりにも周辺がGooglizeされてしまう現在の潮流に際して一抹の不安も感じずにはいられません。

この不安要素の原因の一つには、日本の地域のケーブルレテビ局の相当数が外資系のメディア企業に吸収されて、経営の合理化を迫られる事によって古き良き時代のコミュニティチャンネルの制作環境が変わってしまった今日の現実がいつも目の前にあるからなのかもしれません。願うらくは大手資本や競争原理に影響されない、そして出来る事ならば行政の過剰な支援を期待せずとも成り立ち得る様な地域メディアの基盤が確立される事を祈るばかりです。

トップ写真:先週末に久しぶりに結婚式に出席しました。フラワーシャワー、花嫁には生涯忘れられない瞬間なのでしょう。