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祭りの季節と北からのメッセージ


昨年、子供とのキャッチボールの際に痛めた右肩の調子が一向に良くなる気配を見せず、そのせいもあって弓の稽古は休みがちになっています。友人によれば、「使わないのが快復の一番の近道」との事、しばらくは弓を引きたい欲求を抑えつつ、様子を見ながら無理をしないように心がけねばと思っています。

ただ、私も今年で40代の半ばにさしかかるため、もしかしてこのまま治らないのではないかとの不安と一抹の寂しさを感じています。弓の稽古はもとより、小学3年生の長男が喜んで私とキャッチボールをしてくれるのも後3〜4年かもしれないと言う事を考えるにつけ、 いっその事左で投げる練習をしようかとも思ってみるのですが、30年間以上も右投げで過ごして来た私がそう簡単に左投げに転向出来る訳もありません。私にとって、今でも父親は「手が痛い程すごく速い球を投げる」親父だった訳ですが、それと同様の記憶を左投げによって息子に植え付ける事は、日を追う毎に速い球を投げる様になって来た彼の成長との勝ち目の無い競争になってしまうのでしょう。

まだまだ老いたと言うには早すぎる年齢ではありますが、少しずつこうして体が衰えて行くのだなぁ、などと妙に冷静にしみじみと考えたりもします。

さて、その年齢の進行とともに、最近良く考えさせられる事の一つに、「日本人は日本の事を良く知らずに過ごしている」という事があります。

大変好運な事に、今の仕事の関係で普段は余り行く機会の無かった日本の地方を訪ねる事が多いのですが、自ずとその地域地域で地元の人が大切に育み、そして次の世代に残そうとしている有形無形の文化に触れる機会に恵まれます。その度に感じた事や見聞きした事をこのブログの中のエントリーと言う形で(自分の為の記録という意味も含めて)残す様に心がけているのですが、毎回必ずと言っていい程、何らかの新しい発見をさせて貰っているのです。もしかすると、日本の事を良く知らない日本人は私だけなのかもしれませんが、例えば東北三大祭りの一つである「秋田竿燈まつり」に関しても、祭りのイメージ自体は何となく持ってはいたものの大変恥ずかしい事に名前を知らなかったのです。先日、お目にかかった秋田県のケーブルテレビ局の方との会議の折に、そんな事も知らないのかと当社のスタッフから指摘され慌ててウェブサイトを検索して少し勉強した所なのですが、東北の短い夏を彩る荘厳で激しく美しい竿燈まつり、是非一度はこの目で見てみたいと強く思っています。


まるで「もののけ姫」に出てきそうな、遠野市で見かけた鹿踊りの像。この踊りの事も知りませんでした。

ところで、果たしてこれが20代や30代だったとしても、これらの体験を今と同じ様に新鮮に感じ、且つ積極的に地方の文化を知りたいと自分自身が感じる事が出来たか、実は多少の疑問が生じています。例えば、私が生まれ育った京都府亀岡市の町並みは、昔の城下町の面影を感じさせる景観も殆ど残っていない、むしろ中途半端にコンクリートで固められ、その結果私には町としての表情さえも感じとる対象ではありませんでした。長年にわたって好きではないと思っていたのです。ごく最近になってようやく、朝靄に煙る美しい田園風景や町を取り囲む山々の緑、鮎が泳ぐ川の匂いに故郷を感じる様になってきましたが、 それまでは日本中のどこにでもある普通の地方都市のベッドタウンに過ぎない町として目に映っていた訳です。

大切な未知の文化に触れた時に、それをきちんと学びたいと感じる事の出来る感受性がやっと私にも備わったのだと今の所は解釈しておきますが、一方ではこれまで私が受けて来た教育や社会生活での経験がその様な地域に根ざす独特の文化に対して向き合う時の「姿勢」を規定してしまっていたのではないかとも考えたりもします。
田舎=ダサくて格好悪い所というイメージを知らず知らずのうちに植え付けられ、 その結果地方の若者がこぞって都会を目指し、また地方の行政は中央を指向し、中央は飴と鞭を使い分けて原発や基地を地方に押し付け、そしてその中央でさえもが海外のある一国の顔色を伺っている現実は、地方や地域を大切にしようとする心の動きと反対の方向である様な気がしてなりません。日本中に蔓延るその矛盾に気づくまで、私の場合は体が衰え始める40数年間を要してしまったというのが、本当の所でしょうか。そして地方の文化や自然や食に触れる機会が希薄な私たちにや故郷を遠く離れて暮らす人々に対して、映像コンテンツという形で触れる機会を提供して欲しいと、従来にも増して地元のCATV局の皆様にお願いしたいと思っているのです。

恐らく50年後も100年後も地域の人の不断の努力によって今と変わらぬ形で受け継がれて行くであろう東北三大祭り、「秋田竿燈まつり」と「青森ねぶた」は来週末です。お時間が許す方は、忘れてはならない美しき日本の夏の原風景を探しに行かれては如何でしょうか。

トップ写真:写真や動画で見る秋田竿燈まつりは、実に荘厳で美しいものです。写真は、秋田竿燈まつり実行委員会のホームページ(http://www.kantou.gr.jp)より。