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CATV巡業中


もちろん東京での仕事もありますので、全ての時間を割くわけにはいかないのですが、ここ2週間程は各地のCATVをお邪魔して、当社が始めようとしているDAEサービスの紹介をさせて頂く日々が続いています。

DAEとはあまり耳になじみが無い言葉だと思いますが、いわゆるパソコンのモニタに常駐してパソコンのオーナーと会話をしたり、予め定められたテーマに関する情報を提供したりするマスコットアプリケーションを動かす為のDesktop Agent Environmentとは違い、映像や音楽等の様々なデジタルアセットを交換する為のプラットフォームサービスとして考えたDigital Asset Exchangeサービスの頭文字をとった言葉です。
社内でこのDAEサービスの名称について議論を重ねた結果、サービスの名称を「ボイクル」と命名する事にしました。恐らく、ボイクルの語源をズバリ言い当てられる方どころか類推出来る方も殆どいないと思いますが、その訳はボイクルの言語にあります。ボイクルとは、「Media Vojkruciĝo:メディア ボイクルツイージョ」の略、そしてその言葉はエスペラント語なのです。メディアはさておき、ボイクルツイージョとは岐路・交差路・重要な局面といった意味を持つ英語で言うcrossroadに相当する単語で、知人をつてにエスペラント語の権威の先生にお墨付きを頂いた、また我々の目指す事を的確に表現している言葉だなぁと大変気に入っております。

さて、最近の2週間に渡る巡業や当社での商談では、東海地方、中国地方、四国地方の色々なCATVの皆様に当社のサービスの背景にある思想やサービスの提供を通じて目指すゴールについて実に有意義かつ濃密なディスカッションをさせて頂きました。
その内容についての詳細は、この様な場で皆様に全てをお話しする訳にもいかないのですが、恐らく差し障りが無いであろう私が感じた印象に近い様なもの、あるいはCATV業界の皆様とお話をさせて頂く機会がこれまであまり無かった私が驚いた話等を幾つかご紹介したいと思います。

その1:コミュニティチャンネルについて

ある程度想像はしていたのですが、私たちの様なものが大声でグループ放送の実現と叫ぶ事がはばかられる程、ある特定のセグメントに対するピンポイントな放送は既にCATVの世界で日々行なわれている事を知りました。その最たるものが幼稚園や学校関係のイベント、お遊戯発表会や卒園卒業式です。特に2〜3月はその収録が目白押しになるとの事でしたが、あるCATV局様の番組表はその類のイベントで殆ど一杯になっていました。
人混みをかき分けて手ブレするビデオカメラを廻し、前の人の頭越しにやっと我が子が小さく映っていた、また撮影に気をとられて殆ど自分の目では見ていなかった、といった運動会や発表会での撮影経験をお持ちのお父さんも数限りなくいらっしゃるでしょうが、プロの技術と機材で撮影されたCATV局のコンテンツは家族にとっては最高の記念になる事でしょう。おそらくこの種類のコンテンツは、せいぜい数百人のグループにしかその価値が見いだされないものではありますが、その数百人の視聴者にとっては何物にも代え難いコンテンツである事も間違いないと思います。
メジャーなメディアやコンテンツで画一化されない放送の枠組み、やはりCATV局の存在意義はますますこれから高くなってくる筈だと改めて感じました。
ちなみに、その局様が年間に制作される自主制作番組(コミュニティチャンネル=コミチャン)は凡そ1,000本にも上るとの事、殆どキー局からの配給番組を放送せざるを得なく、その結果ニュース映像を除くとあまり番組制作の余地がない地方の系列局と比べても圧倒的に多い数字であるとの事でした。
当たり前ではありますが、しかしながらこれらのコンテンツはCATV加入世帯でしか視聴する事が出来ません。また、コストをかけてインターネット等の別のメディアにのせるには視聴者のマスが小さすぎる事も事実です。もちろん、ビデオテープにダビングしたものを郵送する等の方法は取れるのでしょうが、単身赴任中のお父さんや離れて暮らすお爺ちゃんお婆ちゃんに対して、如何に簡単に安くこれらのコンテンツを届けられるか、そこに当社の存在意義があると感じました。

その2:アーカイブ構想について

市町村統廃合の影響は色々な所で耳にします。その功罪を問うだけの知識を生憎と私は持ち合わせていませんが、例えば、私が産まれた京都府下でさえ聞き慣れない地名が溢れて私の頭が混乱する事などはいずれは解決されるのでしょうが、農協の統合の際に少しでも優位になろうとする町の農協が積極的に借金の回収に動いた結果として自殺する農家が続出したと聞いた事、等は最悪の「罪」の一例でしょう。
同じく市町村統廃合の影響であるとの事でしたが、ある地域には夕刊の配達がされなくなったと聞きました。
その日の夕刊の発売直前に、そのダイジェストをアナウンサーが紹介する10分の番組を制作されている新聞社とCATV局様は、その様な地域に対してボイクルをつかって配信をしたいと考えられており、その計画を聞き且つ実証実験を行なった時にはその意義に大変感動しました。残念ながらボイクルはそのようなシビアなリアルタイム性を要求される業務を想定して開発されたものではない為、局間を専用線で接続して番組をやり取りする事と比べてそれなりの時間は必要になってきますが、専用線のコストと比べて運用費が節減される事や登録された番組がデータベース化される等のメリットは活かせると思いました。

このように、近接するエリア内でのコンテンツの交換の動きは別の地域でも耳にしました。そのベースになるのは各局での映像アーカイブデータベースです。
その昔、1TB強の特許情報のデータベースを5億円以上のコストをかけて立ち上げた経験がある私は、ハードディスクの大容量化を始めとする関連技術の進歩に感慨深いものを憶えます。当時は1TBのデータベースシステムを構築するのに8畳程のスペースを必要とし、一つのラックにハードディスクユニットを詰め込んでやっと144GBで、今の私のノートパソコンとさほど容量が変わらないのです。ちなみに総重量は7トンでした(笑)。
ただ前述のコミチャン同様に、そのコンテンツに他に無い価値を見いだし必要としている視聴者がCATV網の枠組みを超えて存在している事は事実だと思います。是非、地域に閉じたコンテンツの交換に留まらないネットワークに参加して頂きたいと、これからも働きかけを続けて行きたいと思っています。

(続く)

写真:間近まで行きながら、時間の都合で見る事が出来なかった錦帯橋。以前見た50年ぶりの橋の架け替え工事の一部始終を追った番組は大変興味深く印象に強く残っています。